どうやら今初めてその事に思い至ったらしい。

「でも大丈夫ですよ。貴方は悪い人ではないですし」

そう言い切ってから、肩をすくめて続ける。

「私まだ、貴方の名前も聞いていませんでしたね」

そういえばそうだった。

桔梗は自分の名を告げた後、何よりもまず手当てが先だと此処まで引っ張って来たのだ。

思い返して溜息をつき、改めて名乗る。

「僕は、賢木【さかき】荷葉【かよう】といいます」

「賢木荷葉さん……」

ミルクと砂糖を自分のカップに入れて混ぜながら、桔梗が響きを確かめるように繰り返す。

それから、一つ頷いて言う。

「賢木さんは、悪い人ではないですよ。たった一人で、ずっと戦って来た人なんですから」

「それとこれとは話が違うような……」

再び溜息が洩れる。

やはり何となく不思議な娘だ。

どうしてか、調子を崩される。

疲れを感じて、紅茶をストレートのまま一口飲む。

その様子を、桔梗は変わらず微笑んで見ている。

ああ、本当に全く。

こんなに調子を崩されるのに、居心地が悪くないのは何故なのだろう。







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