玉響
はらはらと紅に舞う葉の中で。
見下ろして来る、冷たい瞳。
冷たくて、優しい瞳。
ああ、なんて綺麗なのだろう。
胸が締め付けられる程に。
「言った筈だ。俺に連れなど必要無い」
返って来るのは、予想通りの言葉。
そして向けられる、広い背中。
「貴女は俺のことなど忘れ、本来在るべき場所へ帰れ」
遠ざかる背中。
彼が行ってしまう。
見送るだけしか出来ない、弱い自分が許せない。
だから、せめて。
「荷葉さん!」
息を吸い込んで、続ける。
「私は忘れません。貴方のことを、絶対に」
彼は振り向かなかった。
言葉が届いていたかは分からない。
舞い散る紅の中で立ち尽くして。
ただ小さくなる背中を見詰める。
ああ、やはり動かせないのか。
冷たい声や、眼差しの中に。
優しさや寂しさが確かに隠されている事に、気付いていたのに。
どうしても動かせないのか。
変えられないのか。
分かっているのに、知っているのに。
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Reservoir Amulet