玉響


「……行ってしまったのか」

「大丈夫?桔梗さん」

不意に声を掛けられて、はっとして振り向く。

気遣うような顔をした鬼若と水晶が近付いて来た。

思わぬ二人の姿に、目を瞬きながら尋ねる。

「見ていたんですか?」

「全てではないけれど」

「だが、予想はつく。荷葉は、行ってしまったのだな。一人で」

二人の眼差しも声も、ひたすらに優しい。

心から案じてくれているのが分かるから、思わず涙が出そうになった。

「……私、何も出来ませんでした。つい先刻まで、触れる程側にいたのに」

それなのに、何も、何一つ。

「私はずっと見て、知っているのに。このまま進めば、あの人は一人で戦い続けて、そして……」

「先予見【さきよみ】の姫巫女。貴女はその力で、未来を見たのね」

「……っ」

水晶の言葉に、思わず息を飲む。

鬼若が軽い調子で言う。

「宮に、お前のいた村から遣いが来てな。先予見の姫巫女が奉っていた宝刀と共に姿を消したと。それで捜しに来た訳だ」

「…………」

「安心して。私達、貴女を無理に連れ帰るつもりは無いわ」

「え……?」

思いがけない事を言われて顔を上げると、水晶は苦笑を浮かべていた。

「この人は捜しに来たなんて言ったけれど、本当は良い息抜きになると思って、旅を楽しんでいただけなのよ。それにね、誰かに恋して一途に後を追う事を、誰が責められるでしょう」

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