落葉


守れて良かった。

この世界が、失われずに済んで良かった。

何も語らず、残さずに消えて行く。

風のような、露のような生涯だったとしても。

彼女に出会えた、それだけで。

色の無い人生が鮮やかに色付くから。

この葉のように。

彼女が、いてくれて良かった。

この想いを告げる事は叶わなくても。

幸せだった。

『私をお側にいさせて下さいませんか、荷葉さん』

満たされていた。

戦い以外、理由も価値も無い人生に、確かなものを。

あたたかく与えてくれた。

もしも最後に願いが叶うなら。

一目でも会って。

一言でも、感謝を伝えられたらと思うけれど。

叶わない、虚しいお願いだ。

本当に、らしくない。

『私は貴方と行きたい』

それでも、最後にこれまで意識して閉ざして来た想い出に浸る事は許されるだろうか。

『荷葉さん』

どうしてあんなに側にいる事を望んでいたのか。

結局謎のままだけれど。

記憶の中の彼女は、何度も読んで挑んで来る。

『荷葉さん』

あの時、差し伸べてくれた手を取っていたら。

彼女は今、此処にいてくれたのだろうか。

- 164 -







[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet