落葉


「荷葉さん!」

急にとても近くで名を呼ばれた。

ぼんやりとしたまま、視線だけを動かす。

すると、舞い散る紅の葉の中を駆けて来る娘の姿があった。

「…………」

何かを言おうとしたが、声を出す事さえ簡単ではなかった。

苦労して、ようやく喉から絞り出す。

「……貴方は、幻か?」

そうに違いない。

こんな所に彼女がいる筈は無いのだから。

幻でも良い。

充分過ぎる程に、願いは叶った。

「荷葉さん、有り難うございます」

傍らに膝をついた姿を見て、幻にしては妙だと思い始めた。

髪は乱れて衣は所々破れて泥に汚れ、幾つも傷を負って血が滲んでいる。

姫として華美な衣に身を包んでいるのも綺麗だろうが、瞳にいっぱい涙をたたえる今の彼女も壮絶に美しい。

「貴方のおかげで、世界は守られました。本当に、有り難うございます」

温かな手が伸びて来て、柔らかな膝の上に抱き寄せられる。

「永い間、お疲れ様でした。荷葉さん」

これは本当に幻だろうか。

かと言って現実にしては幸福過ぎる。

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