追憶
意識していつも通りに接しようとするのが分かるから。
自分もこれまでと同じにしようと思った。
焦る必要は無い。
ずっと追い掛けて、ずっと待って、捜し続けてくれた。
桔梗をかつて、どれだけ傷付けてしまったかと思えば。
ただ側にいる事が、どれだけ尊いか。
苦しい位に分かるから。
今はまだ、これまでのように側にいられるだけでいい。
桔梗がいつか、少しでも関係を変えたいと思うまでは。
このままで構わない。
しばらくして戻ると、部屋はカーテンが開けられて明るい朝の光が射し込んでいた。
「簡単な物しか出来ませんけど、朝ご飯作りますね」
「有り難うございます。桔梗さん、今日仕事は?」
てきぱきと動き出しながら、桔梗は答える。
「休みですよ」
「そうですか。奇遇ですね、僕も休みなんです。良かったら、一緒に出掛けませんか?」
「はい、歓んで。でも、何処に行くんですか?」
不思議そうに尋ねられ、微笑んでキッチンに立つ桔梗の方に歩み寄る。
「後でお話しします。手伝いますよ」
「あ、有り難うございます」
昨夜還った記憶は、まだ完全ではない。
所々、抜けている部分がある。
けれど、一つはっきりした事もある。
もう頃合いだろう。
あの人に会うには。
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Reservoir Amulet