追憶
突然出掛けると言われて、戸惑いもあったけれど。
荷葉のことだから、何か深い考えがあるのだろう。
そう思った通り、乗り込んだ車の中で荷葉は話し始めた。
「会いたい人がいるんですよ」
「私も知っている人ですか?」
「恐らくは」
曖昧な言い方に首を傾げると、不意に訊かれる。
「君に刀を託したのは、巫女さんだと言っていましたね?」
「あ、はい」
言われて、慌てて思い返す。
『お持ち下さい。貴女には必要なものでしょう』
戦うのに必要な刀を渡してくれて。
『御武運を。桔梗さん』
何故か自分の名前を知っていた。
謎めいた巫女。
「あの人が何か知っているんですか?」
そういえば以前、荷葉は言っていた。
直接会った事は無いが、有名な人だと。
「ええ。妖魔のように人ならざるものと戦ったり接していれば、あの人のことは噂で聞く事も多いですから」
「どういう方なんですか?」
「現と妖の仲介者。今は主に見守る存在だそうです」
「……?」
説明を聞いてもよく分からない。
そう思ったのが伝わったのか、荷葉は笑って言った。
「直接会ってみれば分かるでしょう。最も、僕も会うのは初めてですが」
「そうですね。刀を貸して頂いたお礼もしたいですし」
いつか、きちんと感謝をしたいと思っていた。
あの時背中を押してくれたのは、あの人なのだから。
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