追憶


行くのは初めてだったけれど、どうしてかはっきりと道は分かった。

まるで呼ばれるように、導かれるように、迷いは生まれない。

これもあの人の力だとするなら、凄まじいものだ。

しばらく車を走らせ、見付けた小さなコインパーキングに入る。

「此処からは歩きになります」

「はい。あちらですね」

桔梗も感じ取っているのか、一つの方角を見てはっきりと頷いた。

足を進める度に、その感覚は強くなる。

静かで、静か過ぎて張り詰めた。

清らかで研ぎ澄まされた空気。

確かにいるのだろう、この先に。

ただならぬ存在が。

すぐ側にこじんまりとした山がある住宅街を歩き、小さなアパートの角を曲がる。

すると人目を避けるように、ひっそりと小さな神社があった。

近くに住んでいても存在に気付かない人がいるかと思われる程、それは山の斜面に繁る緑とアパートに挟まれながら、静かにそこに在る。

桔梗と顔を見合わせてから、赤い鳥居をくぐって一歩中に踏み込む。

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