追憶


静かに微笑む翼に歩み寄り、話し掛ける。

「あの、翼さん」

「はい」

「あの刀ですが、もう少し貸して頂けないでしょうか」

刀は戦うには必要なものだが、ずっと借りたままというのも気が引ける。

少し緊張しながら尋ねると、巫女は笑って言った。

「あれは元々、貴女のものですよ。私はただ、お預かりしていたものをお返ししただけです」

「え?」

思いがけない言葉に目を瞬く。

「先予見の姫巫女が祈りを捧げ守り続けて来た刀。妖魔と戦うのに、これ程適した武器は無いでしょう」

巫女は遠くを見ているような瞳で続ける。

「かつての貴女は最後に夢を通して、この刀がいつか再び生まれ来る自分の元へ還るよう、信頼出来る人へ託した。そしてそれは人の手を渡り、私の元へ来たんですよ。然るべき時に、貴女へ返せるように」

「……凄い力ですね」

先予見の力だけではない、この巫女の力も。

本当に凄い力だ。

「貴女にも、その力は眠っていますよ」

「え、私ですか?」

驚いて聞き返すと、翼は静かに頷いた。


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