追憶
「……そうだな」
呟いて翼を見詰める大地の瞳はとても穏やかで、優しい。
様々な事を経て、巫女の側に寄り添う事を選んだ。
彼は幸せなのだろう、本当に。
大地には翼が必要なのだろう。
自分に桔梗が必要なように。
彼女がいない生活など、今では考えられないように。
魂の一部と成っているのだろう。
「荷葉さん」
不意に名前を呼ばれてはっとする。
桔梗が笑顔で手を引いて言った。
「翼さんが、刀の稽古をするのに神社の境内を貸して下さるそうですよ」
「木刀もありますから、いつでもお使い下さい」
後ろから翼も微笑んで付け足す。
「有り難いですね。中々、刀の練習が出来る所はありませんから」
嬉しそうに桔梗が続ける。
「早速やりましょう、荷葉さん」
「え、今からですか?」
「はい」
満面の笑顔に、こちらも思わず笑みが洩れる。
「構いませんが……君は元気ですね」
昨夜長時間雨に打たれ、色々な事を思い出したばかりだというのに。
哀しみも苦しみも思い出した筈なのに。
それでも変わらず笑ってくれるから。
救われる、本当に。
- 194 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet