追憶
「あっ、すみません。ずっとお待たせしてしまって」
慌てて頭を下げると、二人はにこにこして手を振った。
「そんな、謝らないで下さい。見ているだけで楽しかったですし」
「ああ。また見せて欲しいな」
「喉が乾いたでしょう。お茶を淹れて来ます」
軽やかに衣を翻して、翼は社へと入って行った。
「あ、お手伝いしなくて良いんでしょうか」
呟くと、大地が笑って肩を叩いた。
「そんな事気にしなくて良い。疲れてるんだから、休憩だ」
「……はい。有り難うございます」
気遣いに感謝しながら、思わず大地を見詰める。
「どうした?」
「あ、いえ。すみません」
慌てて頭を振り、笑顔を浮かべる。
「翼さんと大地さんとお知り合いになれて嬉しいなと思って。ね、荷葉さん」
「え?はい。そう思いますが。どうして突然僕に振るんですか?」
「ずっと黙っているからです。お疲れですか」
そう言うと、荷葉はこちらを見詰めたまま手を伸ばして来た。
長い指が髪に触れ、そっと梳く。
微かに感じては離れる温もりに、どうしようもなく胸が高鳴る。
やがて荷葉が静かに呟いた。
「君は変わりませんね。昔から」
その声は優しくて寂しそうで哀しそうで。
彼の中に渦巻いている感情に、今はまだ届かない。
そう思って苦しくなる。
心は誰にも分からない。
当然の事が、今はとても苦しい。
貴方の見えない心を、知りたい。
知りたくなって行く、時経つ程に。
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Reservoir Amulet