怪異


「高校の時は入っていませんでしたけど、中学の時は読書部でした」

「そんな部活があったんですか。読書をするんですよね?」

「はい。それで感想を話し合ったりして……」

話している間に、緊張が解れて来た。

「特にどんな本が好きなんですか?」

「そうですね、私は……」

そこで思わず言葉が途切れた。

見上げた視線の先には、屋上へと続くドアがある。

感じる。

あのドアの向こうから、これまでよりも強く強く。

「大丈夫ですか?」

荷葉が手を取って尋ねる。

その手を握り返し、真剣な瞳を見詰める。

「はい。行きましょう、荷葉さん」

迷っていてはいけない。

此処で迷っていては、置いて行かれる。

それは、まるで恐ろしい夢の名残のように。

哀しい夢の残り香のように。

胸の中心に、深く重く在る気持ち。

置いて行かれるのは、怖い。

後で悔やむのは、一人残されるのは。

冷たい氷を抱くように、胸を刺す。

だから、迷わない。

前に進む。

差し伸べてくれる手を取って。








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Reservoir Amulet