怪異


本気で言っているのだろうか。

一人だったなら、もっと手こずっただろう。

去年廃校になったばかりのこの場所で、あそこまで成長した妖魔が現れるとは。

やはり好き勝手に広まった噂が影響したのだろうか。

「妖魔が消えたら、嫌な気配も無くなりましたね」

屋上の手すりにもたれて、桔梗が口を開く。

「今回戦ってみて分かりました。あれは、人の意志が関係したものですね」

「……っ」

はっきりと語られた内容に、思わず息を飲む。

「世界が傾くのにも、人の意志が関係しているんですね。そして貴方は、そんなものと一人で戦って来た。渦巻く無数の意志と」

「……桔梗さん。君は」

一度言葉を切り、改めて問い掛ける。

「君は一体、何者ですか」

「……?結崎桔梗です」

「いえ、そうではなくて」

不思議そうに真剣に返されて、少々拍子抜けする。

すると桔梗の方がこちらを見詰めて来た。

「今回戦ってみて、はっきり分かりました。貴方は一人にしてはいけないって」

「……どうしてですか」

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