「…………」

近付いて立ち止まると、静かな眼差しが見返して来る。

知らない人だ。

それなのに、どうして何か言わなければならない気がするのだろう。

言葉は見付からないのに。

しばらくの沈黙の後、青年の方が動いた。

手を伸ばし、微かに髪に触れる。

「葉が付いていますよ」

「あ……有り難うございます」

青年は髪から取った紅い葉を渡すと、それきり何も言わずに背を向けた。

冷たさの混ざる風に、また紅が舞う。

遠ざかる背を掻き消すように、はらはらと。

ああ、だからか。

手にした葉を握ったまま、気付いた事実に目を伏せる。

秋は、何処か別れを感じさせるから。

だから苦手だったのだ。

この風も紅も木々の立てる音も、闇に染まり行く空も。

一つ二つ瞬き出す星も、細く光る銀の月も。

自分を今取り巻く全てが、寂しさを物語るようで。

やるせない胸の行き場をどうしたら良いのか分からなくて。

だから、秋は苦手だったのだ。

その事に、見ず知らずの青年によって気付かされた。

ほんの一瞬の出会いと別れで。

たった一つだけ、紅を残して。

去って行く、後ろ姿に。








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