秋
「…………」
近付いて立ち止まると、静かな眼差しが見返して来る。
知らない人だ。
それなのに、どうして何か言わなければならない気がするのだろう。
言葉は見付からないのに。
しばらくの沈黙の後、青年の方が動いた。
手を伸ばし、微かに髪に触れる。
「葉が付いていますよ」
「あ……有り難うございます」
青年は髪から取った紅い葉を渡すと、それきり何も言わずに背を向けた。
冷たさの混ざる風に、また紅が舞う。
遠ざかる背を掻き消すように、はらはらと。
ああ、だからか。
手にした葉を握ったまま、気付いた事実に目を伏せる。
秋は、何処か別れを感じさせるから。
だから苦手だったのだ。
この風も紅も木々の立てる音も、闇に染まり行く空も。
一つ二つ瞬き出す星も、細く光る銀の月も。
自分を今取り巻く全てが、寂しさを物語るようで。
やるせない胸の行き場をどうしたら良いのか分からなくて。
だから、秋は苦手だったのだ。
その事に、見ず知らずの青年によって気付かされた。
ほんの一瞬の出会いと別れで。
たった一つだけ、紅を残して。
去って行く、後ろ姿に。
- 4 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet