いつものように駅前で待ち合わせ、駐車場へと向かう。

その途中、散々葛藤し言葉を選んだ末に発した問いに、桔梗は笑顔で答えた。

「いませんよ、恋人なんて」

「……そうですか」

あまりにあっさりとした返事に、少し拍子抜けする。

桔梗は笑顔のまま、当然のように続ける。

「今まで、いた事も無いです。誰かを好きになった事も」

「そうなんですか?それは……意外ですね」

職場にいる娘達に比べたら、控え目で大人しいから目立たないかもしれない。

しかし、桔梗は充分美人に入る顔立ちだ。

言い寄る男がいても、おかしくないのに。

「これからも、私は恋をしないと思います」

「……どうしてですか」

断言する口調に違和感を覚えて尋ねると、桔梗はふっと笑顔を消した。

「だって、無くした時につらいですから」

その横顔は、恋を知らないと言いながら。

まるで知っている者のようで。

かつて恋を知り失った痛みを知る者のようで。

妙な胸騒ぎを感じたけれど、何故かそれ以上言葉を重ねる事は出来なかった。








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