辺りに見えるのは、ただ漆黒の闇だけ。

此処は何処だろう。

影が自分の方へ伸びて来て、包み込まれたところまでは覚えているのだが。

と言う事は、此処はあの影の中なのだろうか。

『桔梗さん!』

自分を呼ぶ声を思い出し、はっとして体を起こす。

一人でこんな所に来てしまって、荷葉はきっと心配しているだろう。

あの場所には妖魔の気配もあったし、また無茶をして怪我をするかもしれない。

何とかして、戻る方法を探さなくては。

立ち上がり、闇だけの周囲を見回す。

音も聞こえない、静寂の中。

自分を奮い立たせるように呟いた。

「私、すぐに帰りますから。待っていて下さいね、賢木さん」

そう言った途端、闇しか無かった空間が揺らいだ。

強い風が吹き抜けて闇が払われると同時に、違う景色が広がった。

建ち並ぶ小屋、小さな畑。

訳の分からないままに透き通る日光の中を歩いて行く。

しばらく行くと、流れる川で洗濯をする女性達の姿があった。

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