胸が痛い。

締め付けられるようだ。

熱く激しい想いが迫って来て、胸を打つ。

やっと分かった。

今まで見ていたのは記憶だ。

千歳という女性の、叶わなかった恋の記憶。

自ら捨て去った、一途な想い。

そのやるせなさが、苦しさが胸を打つ。

「……千歳さん」

再び立ち込める闇の中で、祈るような気持ちで口を開く。

「貴女の想いは残っています。遠い時を越えて、今も」

それだけは分かる。

そうでなければ、今自分が此処にいる筈は無いから。

「必ず届きます。貴女の大切な人に」

自分の言葉など、何の慰めにもならないかもしれないけれど。

彼女が呼んで、見せてくれた想いの強さを感じるから。

「私は忘れません。貴女の想いを」

それは受け継がれ、巡るのだろう。

叶わない想いなど、きっと。

『……有り難う』

不意に柔らかな女性の声が響いた。

『やっとあの人に伝えられるわ。貴女を呼んで良かった』

「どうして私を……」

『だって貴女も、私と同じでしょう』

「え?」

意味を問い返す間も無く、強い風が吹き抜ける。

木々のざわめきが、自分の名を呼ぶ声が聞こえて来る。

本来の場所へ、意識が戻って行く。







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