「賢木さん、心配をおかけしてすみません」

それから、じっと動かない妖魔の方へと目を向けた。

「先程から、全く襲って来ないんです。だから君が何かしてくれているのかと思ったんですが」

「私は、何も……」

言いかけて止める。

帯のような影が、ゆるゆると妖魔の方へ伸びた。

そして、ゆっくりとその鳥のような姿を包む。

まるで、何か会話でもしているように。

見守っているように。

『やっと、あの人に伝えられるわ』

ああ、そういう事か。

傍らに置いてあった自分の刀を掴み、鞘から抜く。

「事情は後でお話します。今は」

唇をかみ、寄り添うような妖魔と影を見据える。

「眠らせてあげましょう」

かつてこの地に葬られた想いの眠る場所で。

今度こそ、二人一緒にいられるように。

祈りを込めて、刀を振るおう。

叶わない想いなど無いと。

苦しい程の熱さで、信じているから。






- 58 -







[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet