距離
翌日の夕方から、荷葉の働くレストランは準備に追われていた。
夜から貸切の団体の予約が入っているからだ。
それぞれのテーブルの間に入っている仕切りを取り去り、話をしやすくする。
食器を用意し、飲み物や料理を運ぶ段取りの確認と、やる事は沢山ある。
あっという間に予約の時間となった。
少しずつ集まって来た客達は、テーブルにつくと賑やかに談笑を始まる。
その間を動き回って飲み物の注文を聞いてゆく。
「いらっしゃいませ」
ドアの開く音に気付いてそちらを見る。
緩く波打つ髪の女性と、艶やかな髪を結い上げた女性。
何処かで見たような顔だと考えてから、思わず絶句する。
深い青色のワンピースを着て髪も結っているから一瞬気付かなかったが、あれはまさか。
混乱したまま、空いていたテーブルについた二人に注文を取りに行く。
「先にお飲み物の方を……」
言い掛けた時、黒髪の女性が驚いたように口を開いた。
「賢木さん?どうして此処にいるんですか?」
「……見ての通り、働いているんですよ。桔梗さん」
周りのテーブルに聞こえないように声を小さくして答えると、桔梗はいつものように笑顔を浮かべる。
「賢木さんが働いている飲食店って、このお店だったんですね。私、全然知りませんでした」
- 64 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet