距離


翌日の夕方から、荷葉の働くレストランは準備に追われていた。

夜から貸切の団体の予約が入っているからだ。

それぞれのテーブルの間に入っている仕切りを取り去り、話をしやすくする。

食器を用意し、飲み物や料理を運ぶ段取りの確認と、やる事は沢山ある。

あっという間に予約の時間となった。

少しずつ集まって来た客達は、テーブルにつくと賑やかに談笑を始まる。

その間を動き回って飲み物の注文を聞いてゆく。

「いらっしゃいませ」

ドアの開く音に気付いてそちらを見る。

緩く波打つ髪の女性と、艶やかな髪を結い上げた女性。

何処かで見たような顔だと考えてから、思わず絶句する。

深い青色のワンピースを着て髪も結っているから一瞬気付かなかったが、あれはまさか。

混乱したまま、空いていたテーブルについた二人に注文を取りに行く。

「先にお飲み物の方を……」

言い掛けた時、黒髪の女性が驚いたように口を開いた。

「賢木さん?どうして此処にいるんですか?」

「……見ての通り、働いているんですよ。桔梗さん」

周りのテーブルに聞こえないように声を小さくして答えると、桔梗はいつものように笑顔を浮かべる。

「賢木さんが働いている飲食店って、このお店だったんですね。私、全然知りませんでした」

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