距離
「桔梗、この方は?」
一緒のテーブルについている女性が、控え目に尋ねる。
「あ、ごめんね。賢木荷葉さんという方で、私の……大切な人。偶然会ったから驚いちゃって。賢木さん、私の友達の霄瓊【しょうけい】です」
「ああ、貴方が……」
霄瓊と紹介された女性は、ふわりと落ち着いた微笑を浮かべた。
「初めまして。お会い出来て嬉しいです」
「……はい。こちらこそ」
桔梗の大切な人発言で動揺しつつも挨拶を返し、注文を取ってその場を離れる。
いつも通りのあの様子を見る限り、きっと特別な意味は無かったのだろう。
友達と呼ぶのも知り合いと呼ぶのも何か違うし、勿論恋人でもない。
そんな関係だから表現に困って、ああ言っただけだろう。
それでも桔梗に大切な人と言われた時、これまでに感じた事の無い。
何と呼べば良いのか分からない、奇妙な感覚が走り抜けたのは確かだった。
けれど、今は。
ドリンクが行き渡り、乾杯と共に更に盛り上がる店内を見回して気を引き締める。
理由の分からない胸のざわめきなど無視して、いつものように仕事をこなさなくては。
そう決意を固めて料理を運び始めたところで、男性客の会話が聞こえて来た。
「あそこに座ってるの、霄瓊さんと結崎さんだよな?」
「ああ。結構イメージ変わるよな。二人共、目立たない感じだったのに」
「でも、残念。霄瓊さんは彼氏持ちだって、さっき女子に聞いたぜ」
「結崎さんは?俺、タイプなんだけど」
言葉を挟む訳にも行かず、笑顔のまま淡々と料理を運ぶ。
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Reservoir Amulet