距離
その時、通りを渡った向こうに停まっている車に気付いて霄瓊が立ち止まる。
「少し前から待っててくれてたみたい。本当に乗って行かなくていいの?」
「うん。私なら大丈夫だから」
そう言うと、霄瓊は柔らかい微笑で手を振った。
「じゃあまたね、桔梗。また遊びに来てね」
「うん。またね、霄瓊。お幸せに」
手を振り返し、霄瓊が車の方へ歩いて行くのを見送る。
車から背の高い青年が降り立ち、霄瓊の為に助手席のドアを開けた。
乗り込む瞬間、笑い合って短く言葉を交わす二人の様子が見えた。
ああ、あんなにも。
車が走り去り、駅の方へと歩き出す。
あの二人の暖かな雰囲気が、まだ残っているようで。
ああ、あんなにも。
「結崎さん!」
急に呼ばれて振り返ると、息を切らした若い男性が立っていた。
「一人?二次会には行かないんだね」
「え、ええ……」
話の内容からして、同窓会に出席していたクラスメイトだろう。
よく思い出せないから、高校時代にもあまり親しくなかったと思われるが。
「あの、私に何か?」
「あ、あのさ……!実は俺、高校の時から結崎さんのことが好きだったんだ!」
「え……ええ!?」
力みがちに言われた事に、驚いて目を見張る。
「結局告白出来ないまま卒業しちゃったけど、可愛いなあってあの頃から思ってて……。だから今日、結崎さんも同窓会に出るって知って凄い嬉しくてさ」
「は、はあ……」
まさかまだ名前も思い出せないとは言えず、曖昧に返す。
「ところで結崎さん、今彼氏いるの?」
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Reservoir Amulet