距離
「彼氏……?」
問われて考え込む。
いると言えば勿論嘘だ。
けれどいないと言うのも、何か違うような気がする。
恋なんていらないと、ずっと思っていたけれど。
けれど今、好きな人なんていないと。
そうはっきり言えないのは、どうしてだろう。
考え込んで答えないのを、いないととったクラスメイトは勢い込んで口を開く。
「あ、あのさ……!結崎さん、良かったらこれから俺と」
「桔梗さん、お待たせしました」
突然、穏やかな声に名前を呼ばれた。
そちらを見ると、私服に着替えた荷葉が近付いて来る。
その表情はいつもと同じで笑顔を浮かべているのに、何故だろう。
今は笑顔が、怖い。
荷葉は真っ直ぐに歩み寄って来ると、にこやかに手を取って言った。
「同窓会は楽しめましたか?」
「は、はい。あの」
「それは良かった。迎えが遅くなってすみません。さあ、帰りましょうか」
そこで初めて立ち尽くすクラスメイトの存在に気付いたように尋ねる。
「桔梗さん、こちらの方は?」
「同窓会に出ていた、クラスメイトですけど……」
まだ名前を思い出せないから、他に説明のしようが無い。
「そうですか。此処で偶然、帰り道が一緒になったんですね?」
「は、はい!そうなんです!」
それまで呆気にとられていたクラスメイトが、慌てて同意した。
「じゃあ、俺はこの辺で……!」
そそくさと立ち去る相手を、荷葉はにこやかに見送る。
「夜道に気を付けて」
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Reservoir Amulet