距離


しばらくして、恐る恐る尋ねてみる。

「あの、賢木さん。何か怒っていますか?」

「僕が?まさか」

口ではそう言っているけれど、クラスメイトが立ち去った方向を睨む瞳は凄みを帯びている。

良く分からないが、この怒りには触れない方が賢明かもしれない。

そう思って、取られたままだった手をそっと握り返す。

「……っ」

驚いたように目を向ける荷葉に、微笑んで言う。

「迎えに来て下さって、有り難うございます」

「……迷惑ではありませんでしたか?」

そう返されて、驚いて目を見張る。

「どうしてですか?」

「もしかしたら桔梗さんは、先程の彼と話していたかったかと」

思ってもみなかった事に、すぐに首を振る。

「あのまま話していても気まずいだけだったと思いますし、私は助かりましたけど……」

「久し振りに会って、嬉しかったのでは?」

「いえ、あの……。正直なところあまり話した事も無いと思うので、どうして声を掛けられたのか、私にも良く分からないんですが」

すると、荷葉がほっと息をついて微笑んだ。

「では、帰りましょうか」

「はい」

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