距離


断られるのではないかと危ぶみながら誘ったのに。

「はい、歓んで」

まさかの即答、しかも嬉しそうな笑顔付き。

言ってみて良かったと、心から思った。

「この時間なら、夜景が綺麗な場所が良いかもしれませんね」

「そうですね、楽しみです」

まだ繋いだままの手は離れない。

お互いにその事には触れないままで歩く。

当たり前のように側にいる。

けれど、それが当然ではないと心の何処かで知っている。

どうして知っているのか自分でも分からない程、深くで。

やがて駐車場に着き、停めてあった車に乗り込む。

走り出した車の中、助手席の桔梗が呟くように言った。

「想いは、とても強くて……。こわいものかもしれませんけど、でも」

窓の外に目を向けて、何かを思い出すように続ける。

「誰かを好きになるのは、幸せな事なんですね」

「……何かあったんですか?」

「今日霄瓊に久し振りに会って、恋人と一緒にいるところも少しだけ見たんです」

桔梗が微かに溜息を洩らすのが分かった。

「高校に通っていた頃は、いつも何処か寂しそうで遠くを見ていて……。まるで探しものをしているみたいだったんです」

話を聞きながら、今日挨拶を交わした桔梗の友人のことを思い起こしてみる。

柔らかな雰囲気を持つ女性だったと記憶している。

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