距離
ほっとしたように微笑む桔梗の方へ、僅かに身を乗り出す。
「桔梗さん、僕は」
「あ、信号が変わりましたね」
絶妙なタイミングで青に変わった信号に脱力しながらも、車を発進させる。
少しスピードを上げて、助手席の桔梗に気付かれないように眉をひそめた。
先程、自分は何を言いかけたのか。
改めて考えてみると、分からない。
やけに胸がざわめく理由もまだ、分からない。
更にスピードを上げて、左に海が見える道路に出る。
しばらく行ったところで、桔梗が窓の向こうへと目を向けた。
「賢木さん」
「……はい。今、車を停めます」
何もこんな時に出て来なくても良いものを。
内心で舌打ちをしながら、車を端に寄せて停める。
素早く車を降りて刀を入れたバッグを背負う桔梗は、もうすっかり戦闘モードだ。
凛とした姿は綺麗だと思うが、やはり残念な気持ちは拭えない。
せっかく二人で夜景を見に行こうとしていたのに。
全くついていない。
溜息をつきたいのを我慢して、砂浜に下りる階段に向かって歩き出す。
出て来てしまったものは仕方無い。
さっと片付けなければ。
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Reservoir Amulet