距離


ほんの思い付きの筈だった。

刀を取り出す桔梗の様子を見ていたら、体を温める為に打ち合わせるのも悪くないかと。

それだけで、自分も太刀を抜いたのに。

互いに刀を構えて打ち合った瞬間。

何かが体の中心を貫いたような気がした。

その後も、こちらを見据える瞳や息遣いを感じる程に。

これまでよりもより一層、彼女が近くにいる気がした。

まるで重なり合うように。

共鳴するように。

この感覚を、かつて何処かで。

その時、後ろに下がって距離を取った桔梗の瞳が、僅かに海の方を向いた。

それを見て、小さく息を吐く。

ようやくお出ましになったか。

「……来たようですね」

「ええ」

桔梗が頷いたのとほとんど同時に海から飛沫を上げて、巨大なものが飛び出して来た。

撒き散らす気配だけで分かる。

倒すべきもの、妖魔だ。

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Reservoir Amulet