距離


「え?私からですか!?」

「当然ですよ。君を濡れたまま放ってはおけませんから」

荷葉は笑顔で続けた。

「中の物は自由に使って頂いて構いませんから。温まって来て下さい」

「……では失礼して、お借りします」

あまり反対するのも悪いと思い、躊躇いながらもバスルームに続くドアを開ける。

「…………」

大理石で出来ているらしい洗面所も、ただ広い。

掃除が行き届いているのは、やはり荷葉が綺麗好きだからだろうか。

洗面所の奥には、これまた広いバスルームがある。

何もかもが違う世界のようで、何だか落ち着かない。

此処で荷葉がいつも暮らしていると思うと、余計にだ。

でも今は、彼の言うようにシャワーを有難く使わせてもらうのが先だ。

荷葉も自分が出なければ使えないのだから。

息をつき、思い切って濡れた服に手をかける。

こうして少しずつ彼のことを知って行く程に。

近付いて行くような遠ざかって行くような。

そんな気持ちになるのは、どうしてだろう。









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Reservoir Amulet