距離


桔梗がシャワーを浴びている間に湯を沸かし、食器棚を開ける。

突然連れて来る事になったから、何の用意も出来ていない。

これまで部屋に誰かを入れる事など無かったから、来客用の食器さえ無い。

色も形も違うカップを二つ用意して、溜息をつく。

二つあって良かった。

湯呑みでコーヒーを飲むのは一人の時ならともかく、桔梗の前では少々気が引ける。

そういえば、桔梗は普段紅茶を飲む事が多い。

コーヒーよりも紅茶が好きなのかもしれない。

確か店で貰ったティーバッグがあった筈だ。

キッチンを探して小さな箱に入った紅茶を発見した時、リビングのドアが開く音がした。

「お待たせしました、賢木さん」

「ああ、桔梗さん。温まりましたか?」

「はい。有り難うございました」

着替えに渡した黒いジャージは彼女には大き目だが、それでも先程まで白かった頬に赤味が差していて安心する。

「シャンプーとか、ドライヤーもお借りしてしまって」

「構いませんよ。君の服ですが、洗濯をした方が良いですね」

「え、ええ!?あの、大丈夫です。私、持って帰って自分で」

「僕の服もついでに洗いますから気にしないで下さい。置いておいてもらえますか」

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