距離


今日話した事を果たす為に、わざわざ連れて来てくれたのだろうか。

もしもそうなら、なんて優しい人なのだろう。

今日だけでなく、どうして。

どうしていつも、こんなに優しいのだろう。

けれどそれを尋ねるのは、何故か躊躇われた。

だから代わりに、別の事を尋ねてみた。

「夜景を見るのが好きなんですか?」

「……そうですね。夜景だけではなく、高い場所から見る景色が好きですね。だから此処に住んでいるようなものですし」

荷葉は微笑んで窓の外を見ている。

その瞳は光を受けて煌めいていて。

とてつもなく深く、綺麗に思えた。

「中でも一番好きなのは、夜明けですね。暁光が闇を払って、世界がとても美しく見えて」

穏やかな笑顔を見詰めていたら、嬉しいような泣きたいような、何とも言えない感情が巡って。

ごく自然に呟いていた。

「私も見てみたいです」

荷葉は驚いたようにこちらに目を向けたが、すぐに微笑を浮かべた。

「見て行きますか?」

「……はい」

貴方が好きだと語るものを知りたい。

どうしてそんな風に思うのか。

どうしてこんなに胸が締め付けられるのか。

理由はまだ分からないけれど。

それでも知りたいと思うから。

側にいて、時を重ねて。

少しずつ、知って行きたいから。








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