距離


前に桔梗の部屋へ行った時に本棚を見たからだが、そうとは言わずに微笑む。

「何となく、推理で」

「ええ!?凄いですね!」

素直に関心された。

こんなに素直で、悪い男に引っかかったりはしないのだろうか。

心配になりながら、ソファを示して言う。

「どうぞ。ゆっくり読んで下さい」

「え、良いんですか?映画を観るんじゃ……」

「映画は次の機会にしましょう。本を読んで夜更かしも良いものですしね」

「有り難うございます」

勧められるままいそいそとソファに座った桔梗に、思わず笑みが浮かぶ。

早く本が読みたくてたまらないのだろう。

「今、紅茶を淹れますね」

「あ、私もお手伝い……」

慌てて立ち上がろうとしたところを、笑顔で制す。

「大丈夫ですよ。本を読んでいて下さい。前に桔梗さんの家にお邪魔した時は淹れてもらったでしょう?また今度、お願いしますから」

「は、はい」

紅茶と自分の分のコーヒーを淹れて戻ると、桔梗は既に本に没頭していた。

邪魔にならないようにカップを置いても、何の反応も無い。

もう此処が何処なのかも忘れて、本の世界に入り込んでいるのだろう。

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