神立
仕事を終えて着替えた後、並ぶ本棚の間を歩く。
荷葉の仕事が終わるまでにはまだ時間があるし、気になっていたミステリー小説を買っておきたい。
それに、こうして本に囲まれているだけで落ち着く。
普段あまり読まない雑誌のコーナーに平積みになっている表紙を見て、思わず足を止めた。
表紙に載っている車は、荷葉の車と同じ車種ではないだろうか。
あまり詳しくはないけれど、よく似ている。
いつもお世話になっているし、贈ったら歓んでくれるだろうか。
でもプレゼントが雑誌というのはどうなのだろう。
雑誌を手に持ったまま考え込んでいると、後ろから声を掛けられた。
「あれ、結崎さんが車の雑誌を見てるなんて珍しいね」
「あ、五十嵐【いがらし】さん」
この店で働く同僚、五十嵐至聖【しせい】はまだ仕事中だ。
藍色のエプロンを着けて、親しげに笑っている。
「もしかして、彼氏へのプレゼントかな?」
「彼氏ではないですけど……。プレゼントしようか悩んでいたのは当たっています」
「あ、そうなんだ。結崎さんからのプレゼントなら、きっと歓んでくれるよ」
その言葉に、至聖の笑顔を見上げる。
「雑誌を贈るのは、変じゃないですか?」
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Reservoir Amulet