神立
その時、店のドアに付いているベルの音がして、はっとして顔を上げる。
本屋の袋を大事そうに抱えて入って来る姿に、思わず頬が緩む。
「あの娘?」
様子を見ていた隼が、小声で言った。
「はい」
「早く行っといで。賢木君を捜してるみたいだよ」
その声に背中を押され、厨房から出る。
「いらっしゃいませ」
「あ……賢木さん」
こちらを見た桔梗が、安心したように微笑む。
「すみません、急に来いなんて言ってしまって。迷惑じゃありませんでした?」
「いえ、それは全然大丈夫ですけど……」
店内を見回し、声をひそめて続ける。
「私の方こそ、迷惑じゃありませんか?仕事場にお邪魔してしまって」
「そんな事ありませんよ」
「そうですか?でも何か……視線を感じるような」
日頃妖魔を相手に戦っているだけあり、さすが感覚が鋭い。
「気のせいですよ。さあ、こちらへどうぞ」
窓際の席に案内して、メニューを手渡す。
桔梗は紅茶を頼むと、改めて見詰めて来た。
「あの、その制服……。良くお似合いですね」
「そうですか?有り難うございます」
突然どうしたのだろう。
疑問に思いながらも笑顔で応じる。
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Reservoir Amulet