兆し.22


とうとう顔を上げて台所の方を見ると、そこではエプロンを掛けた霄瓊が忙しそうに立ち働いていた。

後ろから眺めているだけでも、楽しんで料理をしている事が伝わって来る。

どうしてあの娘はいつも、ふとした瞬間に楽しそうになるのだろう。

特に何かがある訳でも無い、変わらない日常の中で。

自分の命さえ限られ、不幸とも言える境遇に置かれても尚。

その笑顔は、壊れない。

それどころか、これ位大した事ではないと言わんばかりにいつも笑っている。

一体何を見て、どんなものを瞳に映せばそうなるのか。

今までに契約した女達の機嫌取りには相当苦労した。

皆、この世の不幸全てを身に受けたような顔をしていた。

そうして、やがて壊れて行ったのに。

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