兆し.26


あの時、咄嗟に手を掴んだのは何故。

意志とは関係無く勝手に動いた体は、まるで自分のものではないようだった。

ほんの少し火傷をした位では、命に危険は無いと分かっているのに。

それでも気に入らない娘を守る為、体は無意識に動いた。

自分の行動が理解出来ずに眉をひそめながら静嵐が風呂から出ると、部屋の中に霄瓊の姿は無かった。

視線を動かして、ベランダに出る窓のカーテンが開いているのに気付く。

洗濯物でも取り込んでいるのかと思って歩み寄ると、想像通り霄瓊はベランダにいた。

しかし想像とは違い、何をするでもなく一人佇んでいる。

この寒い中で薄着のまま風に吹かれているのを見て、静嵐は益々眉をひそめた。

体調でも崩されては面倒だ。

中に入らせようとベランダに一歩踏み出して、ふと足を止める。

伝わって来る心は、今もその動きを感じさせない。

けれど、その表情がいつもと違う。

切なそうな、苦しそうな横顔。

霄瓊のあんな顔は、初めて見た。

近くに立つ静嵐にも気付かず、左手で自分の右手を包むようにしたまま目を伏せている。

それが先程自分が掴んだ場所だと静嵐が思った時、霄瓊の唇から溜息が洩れた。

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