戦いの夜.08


戦いながら移動している内に、二人はビルからかなり離れた場所に来ていた。

空も、いつの間にか暗くなり始めている。

これ以上は危険だと判断し、今日は引き返す事にした。

辺りは砂地が広がっていて、時折瓦礫はあるが目印になるような物はほとんど無い。

黙って歩いていた霄瓊は、同じように無言で足を動かしている静嵐を見上げて口を開いた。

「あの、静嵐。ビルが何処にあるのか、分かるんですか?」

静嵐が迷う事無く歩き続けているから付いて来ているが、霄瓊には帰る方向が全く分からなくなってしまっていた。

しかし静嵐はいつもと同じ調子で、あっさりとそんな不安を打ち消した。

「ああ。気配があるから分かる」

「気配?住んでいる人達のですか?こんなに遠くても分かるなんて、凄いですね」

本当はビルの地下で眠っている霄瓊の気配を辿っているのだが、敢えてそんな事を話す気も無い静嵐は僅かに目元を鋭くする。

あの場を守る霄瓊もまた、静嵐の刻印を持つ。

だからどんなに離れても見失ったりはしない。

一度彼女の纏う独特な気配を知ってからは。

ふと気付くといつも、その源を捜している自分がいて。

隠している心の揺れを見逃さないよう、常に注意している。

苛立ちを覚える一方で、本当は霄瓊自身を嫌っているのではないのかとも思う。

自分でも知らない深くで。

そうでなければきっと、水底で眠る少女の存在がここまで頭から離れなくなったりはしないだろう。

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