クリスマス.04
黒曜は椅子から立ち上がり、ドアの近くに立ったままの霄瓊に歩み寄る。
「折角の可愛い顔にまで傷を作って……。一体何があったんです?」
「あ、あの、ちょっと転んで……」
頬に貼られた大きな絆創膏に触れられて慌てて霄瓊が答えると、黒曜は苦笑した。
「どう転べば、こんなに体中傷だらけになるんですか。階段から落ちたってこうはなりませんよ」
我ながら下手な言い訳とは思ったが、こうまであっさり見抜かれてしまっては立つ瀬が無い。
「すみません」
俯いて、謝罪だけを口にする。
本当の事を話す訳には行かないから、真剣に心配してくれている優しい瞳を直視出来ない。
「謝らなくて良いですよ。話したくないなら、それで構いません。ただ、貴女に何かあると僕が落ち着かないんです」
「店長さん……?」
細められた目に込められた感情が読み取れず、戸惑って見上げる。
心が見えない瞳は、自分が普段共にいる青年とよく似ていて。
人には分からない何かを知っているように思える。
例えば、それは。
限られた者しか行き着く事の無い、本来なら知り得る筈の無い。
深い闇の最果ての。
死という静謐に触れ、見て来たような。
もしも、そうなら。
- 149 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
表紙へ
ページ:
Reservoir Amulet