クリスマス.04


黒曜は椅子から立ち上がり、ドアの近くに立ったままの霄瓊に歩み寄る。

「折角の可愛い顔にまで傷を作って……。一体何があったんです?」

「あ、あの、ちょっと転んで……」

頬に貼られた大きな絆創膏に触れられて慌てて霄瓊が答えると、黒曜は苦笑した。

「どう転べば、こんなに体中傷だらけになるんですか。階段から落ちたってこうはなりませんよ」

我ながら下手な言い訳とは思ったが、こうまであっさり見抜かれてしまっては立つ瀬が無い。

「すみません」

俯いて、謝罪だけを口にする。

本当の事を話す訳には行かないから、真剣に心配してくれている優しい瞳を直視出来ない。

「謝らなくて良いですよ。話したくないなら、それで構いません。ただ、貴女に何かあると僕が落ち着かないんです」

「店長さん……?」

細められた目に込められた感情が読み取れず、戸惑って見上げる。

心が見えない瞳は、自分が普段共にいる青年とよく似ていて。

人には分からない何かを知っているように思える。

例えば、それは。

限られた者しか行き着く事の無い、本来なら知り得る筈の無い。

深い闇の最果ての。

死という静謐に触れ、見て来たような。

もしも、そうなら。

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