クリスマス.09


ただ、もう後には退けないという事実を残酷に振りかざして。

腕に刻まれた印と共に、勝負は始まった。

あれから彼の前では一時も気を休めず、隙を見せないようにして来た。

しかし、最近になって不意に。

怖くて不機嫌なだけではない表情を見付ける度に。

揺れそうになる心を、どうすれば良い。

近付けないのに近付きたい。

何も出来ないけれど、心配させてほしい。

前に行くしか無いのに、戻りたいなどと。

不安定な感情を、何処に仕舞っておけば良い。

『お前の、願いは何だ』

その場に座り込んで、抱えた膝に頬を付ける。

自分の全てを支配する過去は、今も鮮やかに美しく狂おしく。

追憶の中、気付かない内に名前が唇から洩れていた。

「……静嵐」

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