鎖.17


「どうして貴女のような方が、この地上にいるんですか。我々悪魔とは違い、本来天使は人とは直接交わらずに、天界から見守る存在でしょう」

「私には願いがあるからですよ。それを叶える為、再び戻って来たんです」

「それは、やはり……」

霄瓊は黒曜の目を見返して、落ち着いた瞳で頷く。

「はい。私の目的は、壊す事です。あの人を」

「そうですか。では、貴女は静嵐の」

黒曜はそこで言葉を切り、顔を歪めた。

「それなのに、今のままで良いんですか?貴女は全てを知っているのでしょう。貴女が恨むべきは、むしろ僕ですよ」

「恨みだとか復讐だとか、そんな事が目的なのではありません。もしもそうなら、私は天界には受け入れてもらえなかったでしょう」

天使である少女は、辛そうな表情の黒曜に、優しい微笑で語り掛ける。

「ですから、そんな顔をしないで下さい。貴方がしてくれている事も、私は知っています」

「霄瓊さん……」

「でも、私の目的は先程お話した通りです」

静嵐を壊す事、その目的に変わりは無い。

例え誰に何を言われようとも。

「私は今のあの人を許せない。誰かを犠牲にして何も思わないなんて、そんなのあの人ではない」

冷酷な瞳で何も感じない心で、自分の願いも持たずに生きるなんて。

本当はある筈なのに。

優しい瞳も歓びや痛みを感じる心も、自分を失う程に強い願いも。

誰かを愛する事を、本当は知っているのに。

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