聖女の祈り.05


その時、不意に呼ぶ声が届いた。

バイトが終わる時間にはまだ早いから、一瞬気のせいかと思ったけれど。

確かに呼ばれているのを感じる。

それは弱々しく頼りなく、でも静嵐の胸に直接響く声。

頭で何かを考えるよりも先に、体は勝手に移動していた。

契約した相手が呼ぶならば、どんな距離も関係は無い。

空間を瞬時に駆けて辿り着く。

自分を呼ぶ者の元へ。

そして着いた先で一番最初に目に映ったのは、薄暗い中で整然と並ぶ本棚だった。

「おや、意外と早かったですね」

聞き覚えのある声がした方に視線を向けると、店のカウンターの前で黒曜が微笑んでいた。

その腕には、意識が無い様子の霄瓊が抱えられている。

それを見た途端、胸の奥で何かが激しく動いた。

意志など無視して強く突き動かす、この感覚は何度か経験した事がある。

その命じるままに手を伸ばして霄瓊の腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。

胸にすっぽりと収まる体の小ささが軽さがとても痛々しく、同時に。

「そう怖い顔をしないで下さい。何もしていません。ちょっと眠ってもらっただけですよ」

「……他の奴の契約者に害を加えないのはルールじゃなかったのか」

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