聖女の祈り.10
それでもやがて医者から、リハビリの為に病棟の中を歩くよう命じられた。
逆らう気力も無く、言われた通りに病室の外に出て気付いた。
この病棟は恐らく、自分と同じような者が集まっているのだ。
全ての窓には鉄格子がはめられ、さり気無く見張りの目が光っている。
だから医者も病棟の中を自由に歩く事を許したのだろう。
ならば早く次の自殺の方法を考える為にも、とっとと退院しなくては。
我ながら矛盾しているとは思ったけれど、それからは真面目にリハビリに取り組んだ。
やがて杖があれば階段の上り下りも出来る程になり、痛む足を動かして上の階へ向かった。
目的も無く階段を上がり続けて、ふと足を止める。
リハビリの間、何度となくエレベーターを利用した。
そのボタンに、9階なんてあっただろうか。
確か、8階までしか無かったような気がする。
疑問に思って廊下に出ると、そこは他の階とは違って人気が無かった。
行き交う患者も、付き添う看護師の姿も見えない。
他の階には必ずいる監視の者さえいない。
ただ、静まり返った長い廊下が続いているだけだ。
誰も患者がいない階なのだろうか。
そう思いながら歩き出す。
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