秘密.29
それはとても寂しくて切ない事だけれど。
今もこの胸に光る尊い記憶の全てがあるから。
自分はそこから生まれる痛みも全て受け止めたまま、あの人に会いたい。
もう二度と、あの暖かな時間の中へ戻れないとしても。
もう二度と、あの愛しい瞳が自分を見詰める事は無くても。
それでも構わないから、会いたい。
「あの人は自分の全てを捧げて私の事を願ってくれたんです。だから私も、自分に出来る全てで応えなくては」
後悔は尽きない。
初めて会った時、自分勝手な寂しさに負けて握手を交わさなければ。
その後も、一緒にいられる事が幸せで言い出せなかったさよならを。
もしも口に出来ていたなら、こんな事にはならなかったのではないかと。
弱かった自分を許せないから、もっと強くなりたい。
「静嵐が悪魔になってしまったのは、私のせいです。だから私が、無くしてしまった幸せを取り返さなくては」
どんなに悔やんでも時は戻らないのなら、せめて前へと進んだ先で。
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