秘密.32


人の中に混ざり、生きて行く為に力を尽くしながら大切な人が何をしているのかを探った。

何人もの女性と契約しているのを知った時には悲しかったけれど。

きっと自分以上に、優しかったあの人の心が傷付いているだろうと思った。

静嵐自身も知らない本当の心が、今もまだ奥深くで眠っていると信じたかった。

信じていたかった。

でもそれは全て、未練を断ち切れない自分の淡い期待であるとも分かっていた。

それでも、例え魂を捧げたとしても本質は同じ筈だから。

失われた記憶は戻らなくても、優しい本質さえ目覚めさせる事が出来たら。

きっと大切な誰かと巡り会い、愛し合う幸せを手に入れられる。

その為には近くへ行かなければ。

最も近くへ行き少しずつでも罠を仕掛けて、今の冷たいだけの仮面を壊さなくては。

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