寄り添う翼.06
至る所に、彼女との想い出があるから。
不意に鮮明に思い出して、胸を切なく暖かく掻き乱す。
高くそびえるオフィスビルの前で思わず足を止めると、警備員の制服を着た青年が近付いて来た。
「よっ、静嵐!俺に会いに来たのかよ。寂しがりやだな、このこの!」
「……別にそういう訳じゃない、湧碕」
かつて荒廃した未来のこの地を彼なりに懸命に守っていた湧碕は、今も此処を守っている。
そして、今も静嵐とは何も変わらない関係だ。
自称親友として、事あるごとに絡んで来る。
普通の人間であり、変わる前の人生の記憶は残っていない筈だが。
「その割には誰かを捜してるみたいだったぜ?さては恋人かー?親友の俺に隠してるなんて水くさいぞ、このこの!」
「…………」
時折、本当に湧碕は何も覚えていないのかと疑いたくなる。
だけどこの、どの状況でも明るい性格が、時々とても懐かしくて嬉しいのは事実だから。
「見付かったら、ちゃんと会わせる」
彼女に会ったら、きっと歓んでくれる。
そう思って告げると、湧碕は驚いたように目を丸くした。
それから、あの選択の瞬間に背中を押してくれたのと同じ笑顔を浮かべる。
「おう、待ってるからな!頑張って見付けろよ、静嵐!」
力強く背中を叩かれて歩き出す。
こんな騒がしさも嫌いではない。
何も知らずに、それでもいつも励ましてくれた存在は尊いから。
いつかは、全ての事情を語ってみても良いかもしれない。
一度位は、自分から呼んでみるのも悪くないかもしれない。
親友と。
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