深海の心.06


「……そうですね」

湯飲みを置いて、霄瓊が微笑む。

「もう二度と戻らない人を、私はどうしても忘れられなくて。会えないと分かっていても、時々凄く……」

会いたくなってしまう。

戻らない方が幸せなのだと分かっているのに、気が付くとあの眼差しを求めている自分がいる。

「そうですか」

黒曜は息をついて、目の前の少女から自分の手元の湯飲みへと視線を移した。

心では泣いているのに、変わらず穏やかで静かな微笑。

まだあどけなさの残る顔に似合わない、消えない傷の痛みに慣れた瞳。

一体何を映せばこうなるのか、とは思うけれど。

きっと聞いたらこちらが辛くなる内容なのだろうとは予想が出来る。

苦労しているに違いない。

この少女が相手では。





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