深海の心.07


結局今日も客は二、三人しか来ないまま、バイトの時間は終わった。

霄瓊は黒曜に挨拶をして防寒具を身に付け、店のドアに手を掛けた。

こんなに客が少なくて店は大丈夫なのだろうかと心配しながらドアを開ける。

そして前に踏み出した途端、立っていた男に思い切りぶつかった。

相手のコートのボタンが額に当たる。

計らずも勢い良く胸に飛び込んでしまったと気付いた霄瓊は、慌てて後退った。

「す、すみません!」

「……歩く時は前を見ろ」

下げた頭に掛けられた聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには静嵐が立っていた。

「静嵐?どうして此処に」

今更ながらぶつけた額が痛くなって来て、霄瓊はさすりながら目を丸くした。

「用がある」

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