深海の心.09


それからしばらくは速度を緩めずに歩き続け、角を曲がった所でようやく霄瓊の腕を放した。

ほっとしたような顔で呼吸を整える霄瓊を見やって、すぐにまた歩き出す。

霄瓊は急いで追い付いて来て隣に並ぶと、息を切らしながら言った。

「静嵐、よく私のいる所が分かりましたね。バイト先の場所を教えた事なんて無かったのに」

「……分かる。刻印を持つ者は、何処にいても。呼ぶ声も届く」

逃れられはしない。

その刻印がある限り、死ぬまで。

「そうなんですか。じゃあ、悪い事なんて出来ませんね」

静嵐の言葉が持つ重い意味に気付かなかったのか、霄瓊は感心したように頷いた。

「それに、人混みではぐれたりしても安心ですね。静嵐が見付けてくれるなら」

夜の訪れた通りを歩く人々を見ながら言われた事に、静嵐は隣を歩く少女の横顔を見て顔をしかめた。

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