兆し.06


その日の仕事を終えて、店の外に出る。

肌を刺す夜風に一瞬身をすくめ、それから辺りを見回した。

通りに誰もいなくなった頃を見計らって名前を呼ぶ。

「静嵐」

その途端風が巻き起こり、中心に人影が現れた。

影の輪郭だけでも、誰なのかすぐに分かる。

契約を交わしたあの日も、こうして小さな嵐の中から貴方は舞い降りた。

霄瓊は無表情な顔を見上げて口を開く。

「来て下さって有り難うございます、静嵐」

「…………」

何も答えずに一瞬だけ見返して、静嵐がさっさと歩き出す。

急いでその隣に並ぶと、探るような視線を向けられた。

「……あの、何か?」

「何も無かったか」

「え?あ、はい。いつも通りでしたけど」

静嵐は相変わらず無表情のまま淡々と言う。

「何かあったら、すぐに俺を呼べ」

こういう言葉を掛けられたら、普通は嬉しいものなのだろう。

しかし霄瓊にとっては不気味で怖いだけだ。

静嵐の中の感情は、変わらず自分を嫌っていると分かるから尚更。

今までは側にいる事自体気にいらないようだったのに。

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