08


すると時雨が横目で夏雪を見た。

「そう思ってるなら自信が無くなるような態度取るなよな。たまに話せば霧里君呼ばわりだし、いつもさっさと帰るし。僕の事、嫌ってるんだと思ってたんだぞ」

「え?ううん、私は全然嫌ってなんて……」

「今日、他の奴にチョコあげたりしたんじゃないか?」

「あげてないよ、まだ。どうしてそんな事訊くの?」

真剣に尋ねると、時雨は呆れたように夏雪をまともに見返した。

「お前、本当に鈍すぎ。忘れたのか、昔の約束。お前、僕のお嫁さんになるって言ってたけど」

「あ、うん。覚えてるよ、勿論。懐かしいね」

「懐かしんでる場合じゃなくて。今はどう思ってる?」

「え……」

目が合った瞬間、時間が止まったような気がした。

全ての音が消え、胸の鼓動だけが速くなる。

瞳の奥に、吸い込まれる。

「あの頃から、僕の気持ちは変わってないよ。ゆき」

久し振りにそう呼ばれて、それまで感じていた隔たりが瞬時に無くなった。

そうなればもう、そこにあるのは幼いままの素直な言葉だけ。

- 8 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet