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あの頃はただ信じていた。

温もりを感じる安らぎを。

何かを問いたげな大きな瞳からわざと目を逸らして。

気が付けば逃げるように早足になっていた。

羽衣は小走りに俺の横に並んで、少ししてから口を開く。

「あの、今日のライブ、素敵でした」

「ああ、有り難う」

答えながら意識して歩く速度を緩める。

元気そうに見えるが、羽衣は長く入院していたのだから気に掛けるべきだ。

こんな時間まで外を出歩いているのだって体は大変だろう。

初めて会ってから、ライブをやる度に羽衣は欠かさず来てくれる。

そして、いつも穏やかな優しい笑顔で楽屋に顔を出す。

分かっている、彼女は玲歌ではない。

それでも、あの頃に感じていたような心地良さをその笑顔に感じずにはいられない。

『私は何にもいらないから、笑って音楽を楽しもうね。それだけで私は充分だよ』

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