06


もう二度と笑う事など出来ないと思ったのに。

こうして笑顔になれる俺を、玲歌はどう思っているのだろう。

今もまだ、想い出という幸福に捕らわれている俺を。

笑う事で感じる罪悪感を、いつか越えられるのだろうか。

「もし音楽に興味があるなら歌でも歌ってみるか?」

「え?」

「ライブハウスで歌うとかはともかく、歌う事で表せる感情もあるしな。羽衣さえ良かったら、ぴったりの曲を俺が書いてやるよ」

すると羽衣の瞳が、これまで見た事も無い程嬉しそうに輝いた。

「はい!有り難うございます」

「ああ、いや、そこまで歓ばれる事でもないけど」

いつも白い頬を紅潮させて羽衣は首を振る。

「いいえ、とっても嬉しいです。やっぱり幸希さんは、私に今まで知らなかった感情を教えてくれる不思議な人なんですね」

その言葉の意味は、よく分からなかったけれど。

歩きながらふと見せた羽衣の寂しげな横顔に、何故か訊く事は出来なかった。





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